こんにちは、凡蔵です。
今回は、
『20歳の自分に受けさせたい文章講義』
2012年1月25日初版
という本についてご紹介します。
この本は、
書きたいことは頭の中に浮かんでいるのに、それを言葉にするとなるとすぐ手が止まっちゃうんだよなぁ…。
どうすれば頭で考えていることをちゃんと相手に伝わるように書けるんだろう?
口で話すことなら簡単にできるのに、どうして同じことを文章として書くのはこんなに難しいのかな?
友達としゃべるときのように、スラスラと文章を書けるようになる方法が知りたい。
↑こういった人にオススメします。
自分の思いや感情を言葉だけで伝える技術のノウハウが詰まった、文章を書くのが苦手な人の気持ちにしっかりと寄り添ってくれる一冊です。
この本をよく読みこんで、「書く技術=一生使える武器」を手に入れましょう。
『20歳の自分に受けさせたい文章講義』書評・感想
著者紹介:古賀史健さんってどんな人?
まずは、この本の著者である古賀史健さんについて簡単にご紹介します。
古賀 史健(こが ふみたけ)
『20歳の自分に受けさせたい文章講義』著者紹介欄より
1973年生まれ。
かねて映画監督を夢見るも、大学の卒業制作(自主映画)で集団作業におけるキャプテンシーの致命的欠如を痛感し、挫折。ひとりで創作可能な文章の道を選ぶ。
出版社勤務を経て24歳でフリーに。30歳からは書籍のライティングを専門とする。
以来、「ライターとは″翻訳者″である」「文章は″リズム″で決まる」を信念に、ビジネス書や教養書を中心に現在まで約80冊を担当。編集者からは「踊るような文章を書くライターだ」と言われることが多い。
多数のベストセラーを手掛け、インタビュー集『ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書』(講談社)はシリーズ累計70万部を突破。
本書は単著デビュー作となる。
古賀史健さんといえば、本書が出版された翌年にベストセラーとなった哲学者・岸見一郎さんとの共著『嫌われる勇気』も大変有名です。
現在はライターズカンパニーの株式会社バトンズ代表取締役社長として、様々な書籍のライティングを中心に活動されています。
➤株式会社バトンズ公式サイト:
http://www.batons.jp/
➤Twitter:
https://twitter.com/fumiken
➤note:
https://note.com/fumiken
書くこととは、考えることである
まず初めに、この文章講義を「20歳の自分に受けさせたい」と考えたその理由として、古賀さんは次のように述べています。
なぜ、若いうちに“書く技術”を身につけるべきなのか?
『20歳の自分に受けさせたい文章講義』より
答えはひとつ、「書くこととは、考えること」だからである。
“書く技術”を身につけることは、そのまま“考える技術”を身につけることにつながるからである。
(中略)
“書く技術”が身につけば、ものの見方が変わる。物事の考え方が変わる。そしてきっと、世界を見る目も変わってくる。
なぜ書く技術が一生使える武器になるのか?
それは、書くという行為自体が考えることに直結するからです。
文章を書くことは「頭のなかのぼんやりとした思いや感情=ぐるぐる」に言葉を与えて翻訳することであり、同時に自分の思考を整理・再構築してアウトプットすることであると古賀さんは言います。
目に見えない漠然とした「ぐるぐる」を読み手に伝わるように翻訳していくという作業の過程で、ひとは多くの学びと気づきを得ることができます。
それは今後ますます「書く力が重要な時代」になっていくことが予想されるなかで、業種・職種に関係なく生涯にわたって身を助けてくれる武器となり、文章力を身につけることは将来に対する最大級の投資になるとのことです。
トップブロガーやビジネス系インフルエンサーの方々の発信を日々見ていてもみなさん一様に「書くことは大切!とにかくみんな文章をもっと書こう!」といったことを言われていて、この言葉にはわたしも非常に納得させられました。
「理解したから書く」のではなく「理解するために書く」「考えるために書く」。
なぜいま文章力を身につけるべきなのか、その理由がこの言葉に詰まっていると思いました。
第1講 文章は「リズム」で決まる
第1講では“文体”とはなにか、読みやすい文章とはどのようにして書けばいいのかといった点について書かれています。
大きなポイントとして挙げられているのは、以下の3点です。
① 「リズムの良い文章」=「論理的整合性のとれた文章」を書こう
文体=「リズム」の本質とは、支離滅裂なところがないように論の軸がしっかり定まった「論理展開」にあり、全体を通して違和感なくスラスラと読める文章→リズムの良い読みやすい文章となる。
とくに論理破綻を防ぐうえでカギになる接続詞の使いかたはつねに意識し、文章本来の目的である「正しく伝えること」を忘れずに“美文”よりも“正文”を目指すべし。
② “眼” で読むときの「視覚的リズム」を考えよう
具体的には、
・句読点の打ち方
・改行のタイミング
・漢字とひらがなのバランス
これらの要素をひとつひとつチェックしていき、文章を眼で追っていくときの読み手の負担を減らすように視覚的リズムを整えていくべし。
③ 音読して「聴覚的リズム」をチェックしよう
音読は自分の書いた文章を客観性をもって確認できる非常に便利なツールである。
実際に声に出して読んでみることで、読点の位置や言葉の重複などさまざまな気づきがある。
文章を書き終えたあとは改めて音読して、黙読だけでは気づきにくい全体の聴覚的リズムをチェックすべし。
わたし自身「接続詞はなるべく減らして使いすぎないようにするべきである」というイメージを勝手に抱いていたので、「みんなもっと接続詞を使うべきだ。論理破綻を防ぐためにも、つねに接続詞がそこに入るかどうか意識を持とう」というアドバイスは目から鱗でした。
第2講 構成は「眼」で考える
第2講では、第1講で触れられた「論理展開」=「構成」についてさらに踏み込んで具体的に述べられています。
大きなポイントとして挙げられているのは、以下の3点です。
① 映画やドラマのカメラワークのように「序論→本論→結論」の3部構成を組み立てよう
映像表現で見られる「導入→本編→結末」という手法を参考に、文章を書くときも“カメラ=眼”を意識すべきである。
主観と客観の両方の視点から、文章をどのような順番でどう展開していくのかを考えていこう。
② 読者をグッと引き付けて“椅子″に座らせる、映画の予告編のような導入文を書こう
読者はつねに「読まない」という選択肢を持っているので、最初の数行でいかにして読者の興味を引き、最後の結論まで読み進めてもらえるかを考えなければならない。
冒頭にいきなりインパクトのある結論を持ってきたり、逆に核心部分に一切触れずに読者の期待を膨らませたりするなど、様々な工夫を凝らして読者を“椅子”に座らせよう。
③ 論理的な文章の3層構造=「主張・理由・事実」をつねに意識しよう
「論理的な文章」とは、みずからの主張が確かな理由と事実によって裏打ちされることではじめて成立するものである。
自分の文章のなかに「主張・理由・事実」の3つがあるか、そして全体を通して読んだときにその3つがしっかり連動しているかをつねに意識すべし。
いかにしてこちらの主張を正しく伝え、読者の心を動かし、行動させていくのか?
いくつかの具体例も交えてわかりやすくまとめられています。
文章構成を組み立てるのが苦手なひとでも、ここで書かれている方法を参考にひとつひとつ取り組んでいけばうまく考えていけそうです。
第3講 読者の「椅子」に座る
第3講ではあらゆる文章の先に必ず存在する“読者”を意識することの重要性について書かれています。
大きなポイントとして挙げられているのは、以下の3点です。
① 読者の「椅子」に座ろう
必要なのは「読者の立場に立つこと」ではなく「読者と同じ椅子に座ること」である。
本当の意味で読者と同じ視点で肩を並べ、「10年前の自分」「特定のあの人」など明確にイメージしたたった一人の読者に向けて文章を書こう。
あらゆる人に喜ばれるような文章よりも極端なほど絞り込んだ対象読者を想定して書いたほうが言葉のベクトルがハッキリして、結果的に多くの人々に届く文章になる。
② “説得する“のではなく、“納得させる”文章を書こう
読者を説き伏せて押しきる“説得”ではなく、こちらの主張を押し付けずに読者に歩み寄ってもらう“納得”のアプローチをとること。
「仮説を提示→一緒に検証」といった手法や、冒頭に真逆の一般論を持ってくる「起“転”承結」の構成などで、読者に当事者意識を持たせて「他人事」から「自分事」の文章に変換しよう。
③ 「目からウロコ」3割、「すでにわかっていること」7割の構成で書こう
細部における矛盾や誤情報=“小さなウソ”が出ないように「自分の頭でわかったことだけを書く」ように心がけ、自己肯定の欲求と知的好奇心のバランスがとれた「目からウロコ3割:すでにわかっていること7割」の文章で読者の心を動かそう。
徹底的に読者のことを考える=読者と同じ椅子に座ることで、初めて文章を通して他者を動かすことができるようになります。
相手にしっかり伝わるように、とことん真摯に考え抜くことの重要性が説かれています。
第4講 原稿に「ハサミ」を入れる
第4講では文章を仕上げるうえで欠かせない「切る・貼る・足す」の作業=“編集”についてまとめられています。
重要なポイントとして挙げられているのは、以下の3点です。
① 「なにを書くか?」ではなく「なにを書かないか?」で考えよう
すべての文章の入り口には”元ネタの編集”という作業があり、読みやすく理解しやすい文章を仕上げるうえでは自分の書いたものに躊躇なくハサミを入れる勇気が必要である。
「なにを書くか?」という“足し算”の発想ではなく「なにを書かないか?」という“引き算”の発想で「自分にとって大切なものはなんなのか?」を考えながら素材を取捨選択していこう。
② 編集とは「過去の自分との対話」である
文章を書き終えたあとの編集作業=推敲においては「もったいない」「せっかく書いたのに」という“サンクコスト”に縛られることなく、不必要な部分にハサミを入れてどんどん切っていくことが重要となる。
文章を書くのにかかった時間と労力というのは読者にとってはなんの関係もない話なので、あくまでも読みやすさ・伝わりやすさを第一に考えて「1時間前の自分」と対話をしながら容赦なく文章を削っていくべし。
③ 自分の文章を図に描き起こすことはできるか?映像が思い浮かんでくるか?といった視点でチェックしよう
これまでの講義で触れてきた“論理”と“細部”をチェックするうえでは図解という方法が有効である。
「自分の書いた文章を図にすることはできるか?」「文章のなかの細部から映像がイメージできるか?」を考えながら、自分の文章に客観的に向き合うことが大切。
「過去の自分」と対話しながら再確認するのも良いし、身近な家族・友人に読んでもらうも良し。
1回2回とくりかえし読み返して自分の文章をチェックしていこう。
「いい文章」とは「読者の心を動かし、その行動までも動かす文章」であり、必要なのは文才ではなく“翻訳”の意識と技術だけである。
文章を編集していくうえで最も大事なことが、古賀さんのこの言葉に集約されています。
まとめ
ここまで書くための意識、技術、考え方についての古賀さんによる講義内容を要約してみました。
最後のまとめとして、本書のあとがきにはこのように記されています。
書こう。
『20歳の自分に受けさせたい文章講義』より
読むのもいいが、とにかく書こう。
学生時代にどれほど作文が嫌いだった方でも、ここまで読み通されたのなら、もう書けるはずだ。
140文字のつぶやきでもいい。とにかく書いてみよう。
自分はどんな人間なのか。
自分はどこにいて、なにを思い、なにを大切にしているのか。
その思いを誰に伝えたいのか。
書かないことには「ぐるぐる」は晴れない。
書くことで答えを探していこう。
上記のとおり、古賀さんはこの本を読むことでひとりでも多くの読者が「書く」という行動を起こしてくれるように願っています。
そしていままさに、その文章に心を動かされたわたしが悪戦苦闘しながらこのレビュー記事を書いています。
本書にまとめられた貴重なノウハウをしっかり肝に銘じて、もっともっと文章を書く=考えるという行為を積み重ねていき、いつの日かわたしも「誰かの心を動かし、行動を起こさせるような文章」を書きたいなと思いました。